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アルギニンを用いた商品設計マニュアル

アルギニンは、BACCのお供として、多くのスポーツドリンクに配合されているアミノ酸です。また、コラーゲン産生促進にも働くため、美容ドリンクにも多く配合されているアミノ酸だったりもします。
弊社で、利用されるケースが多い以下の用途について、紹介です。

スポーツサプリ with BCAA
HGH粉末ドリンク with オルニチン、グルタミン、リジン等
美容ドリンク with コラーゲン、プラセンタ、エラスチン等
精力系(ED対策)NOサプリ with シトルリン等

スポーツサプリ with BCAA

BCAAとアルギニンを一緒に摂取することによって、脳疲労や筋肉疲労の原因となる乳酸やアンモニアの発生を抑制することができます。BCAAの摂取によって血中アンモニア量が高まることが報告されており、アンモニアによってTCAサイクルによるATP(;エネルギー)の産生が阻害されてしまいます。
アルギニンは、アンモニアを除去するオルニチンサイクルを活発にすることが知られており、また成長ホルモン分泌を促進して疲労感を低減することが知られており、BCAAと共に摂取することが好ましいでしょう。

(1)プロサッカー選手を対象に、運動1時間前に7gのBCAA(ロイシン40%、バリン40%、イソロイシン20%)を250mLのバニラフレーバーの飲料(炭水化物3.4g、たんぱく質1.0g、脂質1.15g)に溶かして摂取させると、BCAAを入れないプラセボ飲料を摂取したときよりも運動中の選択反応時間が速くなった。
Wiśnik P, Chmura J, Ziemba AW, Mikulski T, Nazar K: The effect of branched chain amino acids on psychomotor performance during treadmill exercise of changing intensity simulating a soccer game. Appl Physiol Nutr Metab. 36(6): 856-862, 2001

(2)自転車選手を対象に、筋グリコーゲンを減少させた状態で最大酸素摂取量の70%に相当する強度で60分間+20分間の運動を実施し、運動の直前と運動中15分ごとに150~200mLのBCAA(7g/L)を含むドリンクを摂取したところ、運動後の認知機能がプラセボを摂取した場合と比較して向上した。しかし、運動パフォーマンスに差はみられなかった。
Blomstrand E, Hassmen P, Ek S, Ekblom B, Newsholme EA: Influence of ingesting a solution of branched-chain amino acids on perceived exertion during exercise. Acta Physiol Scand. 159: 41-49, 1997.

(3)BCCA+アルギニンを継続的に投与することで、筋損傷や筋痛を緩和することが大学陸上長距離選手で示された。また、乳酸性作業閾値を運動部所属の学生で評価し、プラセボ間で有意な差が認められた。
松元 圭太郎:運動時の分岐鎖アミノ酸とアルギニンの補給効果に関する研究 京都大学博士論文 2008(報告番号: 乙第12220号)

一般的にはBCAA 4gに対してアルギニンを1g配合することが多いです。アルギニンに限らず、グルタミン、オルニチンやシトルリンも組み合わせても良いと思います。グルタミンは、筋肉増強に働き、オルニチンやシトルリンはオルニチン回路を回しで疲労感を低減いたします。

商品の目的とBCAAの比率

理想とされるBCAAの比率はバリン:ロイシン:イソロイシン=1:2:1、近年、サプリメント先進国のアメリカでは、ロイシンリッチの商品設計も増えております。
1:4:1や1:8:1などの比率が多いのですが、目的は筋肉増強です。
筋肉増強目的で、ロイシンリッチに設計する場合、剤形が粉末ドリンクであれば、同じく筋肉増強作用があるグルタミンも同時に配合することが多いです。
近年、陸上選手ウサインボルトの強さの秘密という理由から、ジオスゲニン(山芋抽出物)を配合されるケースも増えております。

このように、BCAAの比率を変化させるだけで、商品の目的が変わってきます。また、スポーツの種目によっても、配合量や+α素材が変化してくるでしょう。
筋肉増強を必要としないスポーツの場合、1:2:1のBCAA比率で、オルニチン、シトルリンやリジンを配合した方が良いでしょう。

HGH粉末ドリンク with オルニチン、グルタミン、リジン等

アルギニンは、オルニチンやグルタミン、リジン同様、成長ホルモンの分泌を高めることが知られています。
詳しくは >> HGH系アミノ酸へ

アルギニンは、一般的には1.5g以上配合されることが多いのですが、独特な味と臭みがあるので、大量に配合すると味の調整が大変になります。オルニチンやグルタミンも上手に配合することで、美味しく仕上げることが重要ポイントです。
柑橘系の香料と相性が良く、独特な味や臭みをマスキングできます。

一方、アミノ酸の摂取量が15gを越えてくると、腎臓への負担に注意が必要です。なるべく少ないようで大感が得られる商品設計の工夫が必要なのです。
また、安価なリジンを高配合してしまうと、腎臓に負担をかけかねないため、1000mg/日以上の配合を避けることをオススメしております。

美容ドリンク with コラーゲン、プラセンタ、エラスチン等

アルギニンは、医療現場でも活躍するアミノ酸です。褥瘡や手術後の創傷に対して利用されており、寝たきり老人の床ずれや病気や外科手術後の患者さんの回復にも役立てられています。これらは、アルギニンのコラーゲン造成の作用と免疫力を高める作用によるものです。
不可欠アミノ酸としてのアルギニン 医学のあゆみ 1995; 173(5)383-386

美容面では、比較的体感があるのがアルギンですが、1000mgほど摂取しなければならず、ドリンク系の商材にしか活用できないです。
特に、錠剤は、割れてしまう特性があり、加工が非常に困難です。

精力系(ED対策)NOサプリ with シトルリン等

アルギニンは、一酸化窒素(NO)の産生を促して、血管を弛緩拡張させることより、男性向けのED対策を中心とした精力系商品に配合されることが多いです。アメリカでは、心臓病の予防目的で利用されている背景もあるようです。

シトルリンを同時に摂取することにより、NOの産生量が増えることがわかっております。アルギニンは、一定量以上摂取すると、NO産生量が上がらなくなります。それをさらに産生アップさせるのがシトルリンの役割です。
その他、ビタミンEやビタミンCなどの抗酸化物質でも、NO産生量が増えることがわかっています。
Hayashi T, Juliet PA, Matsui-Hirai H, Miyazaki A, Fukatsu A, Funami J, Iguchi A, Ignarro LJ. l-Citrulline and l-arginine supplementation retards the progression of high-cholesterol-diet-induced atherosclerosis in rabbits.Proc Natl Acad Sci U S A. 2005 20;102(38):13681-6.

このNO産生のメカニズムは、バイアグラの父とも呼ばれるルイス・J・イグナロ博士(米国カリフォルニア大学ロサンゼルス校 医学部薬理学教授)によって発見されており、1998年ノーベル医学・生理学賞の受賞へとつながっていきます。

アルギニンを摂取する場合、アルギニン1500~2500mg/日に対してシトルリン500~1000mg摂取すると良いと、イグノア博士が提唱されています。
シトルリンの単体800mg/日で冷え性に対するデータがあることなどから、800mg配合されることも多いです。
機能性食品素材としてのL-シトルリン Food style21 20085; 12(5) 96-98

ちなみに、このNO産生の効果を活用し、頭皮の毛細血管の血流改善を目的とした育毛商品にも配合されていたりします。

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